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「一般ヒーロー」

インタビュー

広報協力してくださっている松本京子さんにインタビューしてもらいました!

​PUYEYのことから作品のことまで、色おしゃべりしてます。

◆PUYEYの由来を教えてください。

 (五島)最初は平仮名で柔らかい響きにしたくて『わたげ』という名前にする予定でした。わたげのように風に乗って全国各地や海外に飛んで行って、落ちたところで花を咲かせるっていうコンセプトです。そしたら同じ時期に同じような名前の劇団が旗揚げして「だめじゃん!」ってなって(笑)。いろんな言語でわたげを調べていたら、タイ語で「わたげ=PUY(ぷーい)」を見つけました。その時、けちゃがタイに興味があったり、タイのアートシーンが面白そうとか、親日とか、あ、あとけちゃが南西の方向が吉報って言われたり(笑)そんな理由からタイ語いいねという話になりました。響きも可愛いしって。

 でもプイだけだと物足りなかったので「◯◯プイ」とか「プイ◯◯」とかいろんな言葉をひたすら書き出して。最終的に「えいっ!」っていう勢いだったり、「イェーイ」って喜んだり楽しんだりしたときに使うかけ声である言葉を「エイ」をくっつけて「PUYEY(プイエイ)」とつけました。

 

◆グッズ&舞台美術について

———ユニット名がわたげだから、グッズも全部わたげのイラストなんですね。

(高野)そうです。去年初めて作ったけどすごく反応がよかったんです。じゃあ今年も作んなきゃと。Tシャツとサコッシュは引き続き作る予定です。

 ユニットのコンセプトに由来しているデザインを生かして、前回の続きにしようと考えてます。わたげは飛んでった先で地面に根をはるのか?まだどこかへ飛んでるのか?じゃあ、さらに次公演のときは芽がでるのか?花が咲くのか?みたいな。続きものになっていけばPUYEYと一緒に歩んでいってもらえるかなって。

———今日るっちとけちゃがT−シャツ着てるけど、デザインが少しづつ違いますね?

(高野)そう。わたげの個数が違ったり、今るっちが着てるのは袖にわたげがあったりと配置も一つずつ全部違います。全部手作りだからできるんです。ハンドメイドっていうのはPUYEYの特徴かもですね。

(五島)ほぼ俺が作ってます。確かに美術とか舞台のDIY感はありますね。理由は特にないですが、物語があるほうが人は興味を持つと思います。既製品を使うよりも演じる側が作ってるとか、そこに物語や意味があるほうが人はやっぱり惹かれてしまう。グッズもそうだけど、売る&買うだけじゃない別のつながりが生まれると思います。

(高野)だからあえて手作りでやるし、舞台装置も頑張れば見てる人も作れるくらいのレベル(笑)。チラシも毎回手作りです。チラシの顔はめパネルは、いま取材受けてるまさにこの稽古場でマッスイが描きました。今回はこれもツアーに持って行きます。チラシ中面の私のパネルもよく合成かと思われちゃうけど手書きなんですよ。しかも自分で手で持って支えてるっていうアナログ感(笑)。

 

◆ツアーについて

ーーーツアーの話が出ましたが、今回はどこにいくんですか??

(高野)久留米・諫早・北九州・苫小牧・日田・三股・福岡の7都市です。

(乗松)苫小牧がさらっと入ってるのがすごいよね(笑)。

(五島)ね、急に北にって。

(高野)今年は諫早が初。どんどんツアー地を増やして、わたげのようにいろんなところに飛んで行こうとしてます。

(五島)今回は約1ヶ月半毎週どこかに行ってます。お客さんの反応も地域によって違う部分はありますね。苫小牧の人は静かに見る、九州の人は反応が多い。北の人はシャイって言われてるけど実はみんなとても楽しんでくださってるんです。

(高野)そう内面はすごい楽しんでくれてる。反応がないから大丈夫かなって思ってても終わったら「面白かったですー!きてくれてありがとう!」って握手しながら目をキラキラさせて言ってくれるからうれしいです。

 

◆PUYEYの特徴について

———「何気ない日常」がユニットの創作テーマなのかなと思うのですが、いかがですか?

(高野)そうですね。大きな事件が起こるわけでもなく、一般の人の営みのほうが私は面白いなと思います。最近「人間の生産性」が話題になったじゃないですか。あんな風に、人は生産するため社会に役立たないといけない、そのために生きないといけないと思うと、めっちゃ生きるのしんどいと思うんです。もしその言葉が意味する「生産性が低い立場」になったとき、生きる価値がなくなっちゃう。それってすごくむなしいと思うんです。じゃなくて『生きてるだけで価値がある』って考え方でいれば、もっと多様で結果、社会全体が生産的になるんじゃないかなと。

 そういう点からも私は、大きな事件があってそれを解決するよりも、人々が『ただ日常を生きてる』ほうが価値があって美しいなと感じます。些細な日々や出来事のほうがかけがえないって感じるから、そんな作品を作りたくなるんだと思います。頑張りすぎずに生きたらいいのにみたいな(笑)。私も含めて。私、すぐ頑張りすぎちゃう人なんで。

(五島)俺は…

(高野)マッスイはあんまり頑張ってないね(笑)。

(五島)頑張ってるけど、ベースにはどれくらい頑張らなくて生きれるか?みたいなことを思っちゃうタイプ。もちろん現実はそうはいかないけど。頑張りすぎてる人とか見ると「なにやってんだよ」って思っちゃう。でもその行動が間違いとか自分が正しいとかじゃなくて、きっとその人にはその人の事情があって…何て言うんだろう、そんな必死にならない方が楽なんじゃないかなっていうのは自分の中にありますね。俺は、別に演劇は辞めたかったらいつでも辞められる、みたいな気持ちでやってるから逆に続けられてるっていうか。演劇がなくちゃ私生きていけないみたいな人はあんまり信用できないというか。。。

(高野)え!私だいぶそうだよ!?

(五島)そうそう(笑)。けちゃはそっちだからね。いやでも、演劇とかダンスとか芸術はなくなっても死にはせんやろみたいな。確かにもうあなたは一生絵が描けませんって言われたら「うわ、死にてぇ」って思うけど、そうなっても結局人間は生きていくというか。生きることと、それとは違うというか。あくまで『生きる』ことが最初にあって、その上で色んな要素があるって俯瞰して考えると楽というか。きっとそれが多様性を受け入れることでもあるのかなーと思います。

 自分がいる世界は1個だけって思うんじゃなくて、色々な方法があるんだよってことを届けるのがPUYEYの作品の根底にはあるのかな。執着しなくていいんだ、ちょっとしたことですごく楽になるということはテーマにしようとしてるのかなと思いますね。

 

◆振付の加入について

———前回の短編「フェアロビクス」のときから、太めパフォーマンスの乗松薫さん(以下るっち)が振付に加入していますが、その理由は?

(高野)私自身、以前振付けてもらって踊ったこともあって一番信用できるのがるっちだった。太めパフォーマンスの作品も好きだし、お互い付き合いも長くて。前回の「フェアロビクス」はストーリーがある演劇というより、行為(エクササイズ)を進行していく構成だったことと、作品全体の中で身体が持つ情報の割合を上げたかったので振付をお願いしました。

(五島)当初はああなると思ってなかったけど。

(高野)結果、全然最初と違う話になるっていう。

(五島)そう、最初のわかりあえなさからスタートするっていう。

———2人が3人になって変わるものですか?

(高野)変わりますね。客観的にみてくれる他者がいると創作が捗る。何が起きているかわかりやすい。

(五島) あと意見を言うとき仲間ができる(笑)。1対1だと発展しづらい。もうひとりいると、ひとつの意見に対して同意や反論の動きが見えて来る。

———物語を考える過程でも変わるものですか?

(高野)今回は変わってる。「フェアロビクス」は私が考えて見せたい形も既に決まってて、それに対してテンポ感や空間に対する配置をるっちが気にしてくれていた。今回に関してはどちらかというと一緒に作っている感じ。お話を聞いてくれてる人がいる、少しずつ関わってもらい方が変化しているのかなと感じます。

(乗松) 「なんでその登場人物そう思ったの?」って聞いてて疑問に思うことを掘り下げている感じですね。きっと2人で創作をしているときっと気づかないうちに前提を先に作ってしまう。私はその物語を第三者の客観的で違う角度から見ることに意味があるんだと思います。

(五島)それがいい影響を与えてくれるんだよね。

(乗松)人の作品に振付で携わるのはPUYEYが初めてです。うっかり考えてると楽しくなっちゃって自分で作りたくなっちゃうこともある(笑)。自分の立ち位置を探りながら、同時に新鮮だな、おもしろいなぁと思いながら関わっています。

 

◆作品の視覚性・身体性について

———ストーリーのなさ、言葉で表現しないというのはPUYEYとして意識してますか?

(高野)してますね。説明しすぎるのは嫌だっていうのは2人とも共通してあって。ダンスとか美術をやっているから身体的・視覚的な要素で見せたい想いもあるので、言葉をなるべく少なくしたいという想いがあります。

(五島)自分はいつも台本をもらっても言葉だけじゃイマイチおもしろさがわかんなくて。なんでみんなこれで想像ができるんだろうなぁと不思議なときがあります。文字からくる情報にあんまり頼ってないのかもというか、自分はビジュアルや映像でのほうがすとんと落ちる。だから本番の終わる頃にやっと役を理解して「がーん」ってなることがあったり(笑)。単純に動き起点で考えるほうが自分はやりやすい。人間の身体の構造上もともとそうだろうし。

(高野)あと広い世代・海外の人に楽しんで欲しいので、言語がわかんなくても楽しめる作品にしたいことも理由です。客席に子供がいると反応は違いますね。子供につられて大人も素直に反応しちゃう。その純粋な反応が私たちのパフォーマンスに作用する、そんな循環が生じたら、本当にその瞬間一緒に作品に作ってるような感覚になります。だから子供のお客さんって重要だなってPUYEYではキッズ割を設定しています。子供も大人もシンプルに楽しめる作品をとなると、言語よりも視覚的・身体的にしたほうが楽しんでもらえるので言葉はあまり使いません。

 それから普段演劇を見ないお客さんに届けたいのも理由。お芝居を見慣れてる方にも、そうでない方にとっても楽しめるかどうか、その上で自分たちがやりたい事がやれているかどうかという視点を持っています。それはきっと地元日田で演劇祭を企画したり、各地でワークショップを通していろんな世代の人と関わったから出来た視点だと思います。観客の層が厚い、振り幅のある作品って表現として強いなぁと私は感じるので、だったらそっちに挑戦したいなって気持ちはありますね。

 

◆今作について

(高野)ヒーローの話です。私が落ち込んでいるとき友達が励ましてくれて、それでめっちゃ救われたんです。他者の言葉ってすごい、彼女は私にとってのヒーローだなって。でもよく考えたらヒーローって特別なものじゃなくて、誰もがなれる、そして反対に誰もが悪者になることもある。物語のあらすじは自分の中にある負の感情と戦っている人、自分の中の戦いをポップに描こうとしています。

 主人公は宅配便の配送スタッフをしている男。彼は子供の頃近女のおばちゃんとヒーローごっこをしてて、勢い余ってそのおばちゃんに怪我をさせてしまう。その罪悪感を持ってずーっと生きてきた配送スタッフしげるが、「自分の中の罪悪感」や「自分を否定する気持ち」と戦ったり、自分自身と向き合うことで結果的に誰かが救われる。物語のストーリー中でも結果的に誰かを助けるし、それがまた結果的にみている観客の人を助けるような作品にしたいなって思ってます。

(五島)それって本当に世の中から見るとちっちゃいネジだよね。笑

(乗松)ほとんど何も起きてなくて自分の中で思い悩んだ結果、他の誰かが救われるってすごいよね。実際はほとんど何も起きてないよね(笑)。自分の世界の出来事が、結果的に周りの人の世界を動かすっていう。

(高野)そうほとんど何も起きてない。本当に小さな内面のお話。

(五島)でも現実そういうことってあるよね。本人が意図してないことで誰かが助かるっていう。

(高野)子供ができないことと向き合って乗り越えるって感動な物語に描かれるけど、きっとそれって大人になってもみんな変わらなくて。大人になっても子供の頃と同じように色んな小さなことにぶつかって乗り越えてると思うんです。だからそんな、その人自身がなにかを乗り越えることで、周りの人が救われる物語を描きたいです。この物語に関係するみんなが少しずつ救われる物語。

(五島)ヒーロー願望は誰にでもあるよね。すごい感謝されたいみたいな。だからそこもどう具現化していくかってところもポイントになるのかなと思います。

 

◆最後に

———何か言いたいことはないですか?

(高野)あ、小学生500円です!

(乗松)そこ!?(笑)

(五島) PUYEYオリジナルT−シャツ着て来たら500円引です!全員来てきたら大変なことになりますが(笑)

(高野)でもやります!それはその人たちが私たちを応援してくれてるってことだから、その人たちに私たちの物語の続きを届けたいです!ぜひ観に来てください!

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