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PUYEY 5th season「おんたろうズ」インタビュー

福岡のFMラジオ LOVE FMの「明治産業presents OUR CULTURE, OUR VIEW」にPUYEYの高野桂子と五島真澄が出演し、PUYEY誕生秘話や『おんたろうズ』について、パーソナリティの佐藤ともやすさん、番組プロデューサーの三好剛平さんと約1時間、たっぷりお話ししました。

※インタビュー内容については番組の許可を得て掲載しています。

アンカー 1

イントダクション:PUYEY誕生秘話

佐藤ともやす(以下、佐藤):今回はお三方を部室のような狭いスタジオにお越し頂きました。

三好剛平(以下、三好):ありがとうございます。

佐藤:まずはPUYEYから…けちゃさん!

高野桂子(以下、高野):はい、けちゃです、こんにちはー。

佐藤:マッスィーさん!

五島真澄(以下、五島):はい、よろしくお願いします!

高野:本名は言わないんですか(笑)

三好:皆さんご存知的な感じの紹介でしたね(笑)。

佐藤:PUYEYのおふたりをお呼びしましたが、お名前をお願いします。

高野:はい、高野桂子です。けちゃ、と呼んでください。

五島:五島真澄と言います。マッスィーといつも呼ばれております。

佐藤:そして今回ご紹介する公演の制作で携わっている菅原力さんです。

菅原力(以下、菅原):こんにちは、よろしくお願いします。

 

佐藤:というお三方をお迎えしましたが、まずは「PUYEY」って何ですか、という。

高野:「演劇的パフォーマンスユニット」と名乗っています。演劇の枠に捉われない路上でのパフォーマンスだったり、エクササイズ形式のパフォーマンスだったり、街歩きのパフォーマンスだったり…演劇を軸足に置きながら色々なパフォーマンスをしている二人組のユニットです。

佐藤:立ち上げはいつだったんですか?

五島:2016年の5月です。

三好:では、今年で7年目ですね。

高野:そうです、そうです。

佐藤:それまで二人ともそれぞれ演劇畑でやっていたということですか。

高野:そうですね。そんな中、私が自分で何かやりたいな、作品を作っていきたいな、って思うようになっていたんです。マッスィーが音楽とか、絵を描いたりとか、お芝居、ダンスとか結構一人で色々できる人でした。あとは英語もできるのでマッスィーと組んだら「海外進出できる!?」とか、色々できるぞと思って、一緒にやろうよ、と声をかけました。

佐藤:当時、マッスィーさんも自分で何かやってみたいな、という想いはあったんでしょうか。

五島:僕はどこかに所属することもなく、ずっと個人で転々と活動していました。どこかに所属するなら、自分で作るのかなぁと考えていた時だったので、ちょうどタイミングが良かったんでしょうね。で、けちゃと一緒に面白いことできそうだなと思ったので、組みましょうと始めた感じです。

佐藤:それまでは主に俳優として活動されていたのですか?

高野:そうですね。

結成前に北九州でモノレールの中で演劇するという企画があって、作り手の体験をさせてもらったことがありました。私は俳優だったんですけど、構成と演出もして、その時に「あ、作り手側も面白いな」と思ったんです。で、マッスィーはその時に俳優で関わってくれていました。

佐藤:結成して、まず、何をやろうというお話になったのでしょうか。

高野:二人組なのでフットワーク軽く、色々なところに行けるというのが私たちの強みだと思っていました。私が地元の大分県日田市で、自分で企画した演劇祭をしていたこともあって、色々な地域に作品を持っていきたいという気持ちもありました。

劇場空間でなくても、ギャラリーとか古民家とかでも身体一つで上演できる作品を作ってツアーをしようと、旗揚げから5ヶ所くらい行っていました。

五島:そうだね、基本は九州圏内で、

高野:毎年ツアーするユニットとしてやってきたね、2019年までね。

五島:コロナ前まではね。

高野:そう、そこからストップしてやっと今年本公演がまたできるという感じです。

佐藤:PUYEYの結成当初からいわゆる劇場の枠に捉われずに活動していたということですね。

高野:もちろん劇場でも機会があればやりたいと思っていたんですけど、いかんせん借りるのには大きなお金がかかります。そもそも二人だし、そんなに資金力もないからまずは私たちのイマジネーションと身体で見せるものを作っていこうというのが当初はありましたね。

五島:軽自動車に荷物全部詰めてツアーしていましたね。

三好:演劇でもあり、パフォーマンスでもある活動となると、例えば主催者側からはカテゴライズが難しくてお声がけされづらいということはなかったですか?

高野:声かけられるよりも、私たちが手挙げることが多くて。

三好:いいですね。

高野:フェスに参加することも多いですが、「やりたいです!」って直談判することもあったし、公募枠で「こういうことをやっています」と応募することもありました。それでちょっとずつですけど、認知度を上げていきましたね。

五島:ツアー先も全く行ったことない土地というよりは、誰かとのつながりがある人や場所がある土地に行くことにしていました。

高野:声かけられたことないね笑。

五島:そんな悲しいこと言うなよ!

一同:笑

高野:これからよね。

五島:そう、これから、これから。

introduction

PUYEY の作品:その 1

佐藤:最初に創り上げた作品はどんなものだったんですか?

高野:『てばなしばなし』かな。

五島:そうですね。

高野:1時間ぐらいの作品で、今で言うちょっと発達が遅れた女の子がおじいちゃんと出会い、人と関わることを知るお話です。今まではぬいぐるみとしか話さなかったけれど、おじいちゃんと関わることでぬいぐるみがなくても一人で過ごせるようになるという内容です。

五島:おじいちゃんとその女の子の交流によって、女の子も、おじいちゃんも心開くようになる…

高野:今までちょっと手放すことができなかったものを手放すというお話でもあります。

三好:心が動きそうな作品ですね。

五島:女の子は家庭環境や親との関係に影響を受けて、そんな状態になってしまった背景もあります。

高野:女の子のイマジナリーフレンドがいたよね。

五島:そうそう、いたいた。

高野:ホナプップーっていう笑

三好:ホナプップー笑

高野:マッスィーがお尻に…

五島:そう、僕が黒いタイツをはいて、その上におじいちゃんのズボンを重ねてました。ホナプップーが現れる時だけ、尻にある顔を出すんです。

三好:なるほど、おじいちゃん役兼ホナプップー役であると。

佐藤:一人でやってますからね。

高野:お尻をこう動かして、「ホナプップー」とか言って笑

五島:そうそう、しゃべってた。

高野:「ホナプップー、だめだよ〜」とか私が言って笑

五島:尻で演技してた。今考えたらすごいな。

高野:シュールだったね。

五島:演劇はやっぱり台本があって、セリフを発して動くことが多いと思うんですけど、そこだけに捉われないというか、身体的な動き、音、ビジュアルとかの要素もセリフや言葉と同じくらいに扱って作品が創りたいという想いが僕らにあって、演劇的パフォーマンスなんです。お尻で演技することもそこから来ているパフォーマンスではありますね。

 

三好:今どれぐらいの作品を積み上げてこられたんですか?

高野:毎年一つの作品でツアーをしていたからそんなに数はないよね。

五島:そうだね、ツアーをしている作品だと過去に四作品。あとは短い作品がいくつか。

高野:紙芝居、『フェアロビクス』、『today』、『ハッピーロスタイム』とか。

五島:だから全部で10くらいかなぁ。

三好:ご本人たちにこれはなかなか難しい質問かもしれないですけど、ご自身たちの作品の特徴ってどう紹介されていますか?

高野:プロフィールには、大人の絵本のような作品で、人が生きていく「やるせなさ」を描いている、と書いています。さっきマッスィーが言ったように、言語の情報よりも、それ以外の情報で状況や心の動きを表現することが多いので、文字とそれ以外の絵本という形に例えて説明していますね。やるせなさを絵本のように描くので、子どもが見てももちろん伝わるけど、案外大人に刺さったりします。

三好:やるせなさ、なんですね。

五島:でも、見たあとには「明日からはちょっと頑張ろうかな」という気持ちになってもらえるような作品を創りたいと想っていて。普段、社会の中で抱えている問題だったりとか、悩みを取り上げることが多いので、必然的に辛いことややるせなさを描くことが多くなりました。

三好:やるせなさを見せるけれども、その先には希望みたいなものに接続していくんですね。

高野:そうですね、必ず最後に一筋の希望は置いておこうと意識はしていますね。

佐藤:お二人もやるせなさ、もしくは生きづらさみたいなものを感じることはありますか?

高野:私はいっぱいありますね笑

五島:僕はどちらかというと楽観的で、のほほんとしているんですが、そういう人たちがいることはわかっているつもりです。もちろん生きづらいと感じることもありますし、社会に対する憤りもあります。そういうことを説教くさくならないように作品に落とし込むということをやっているかなぁ。

PUYEY の作品:その 2

佐藤:事前に『today in 出石』という過去の作品も映像を見せてもらいました。

長期間のフィールドワークみたいなこともされていたんですよね。

高野:「豊岡演劇祭」という兵庫県豊岡市で行われているフェスティバルに参加して、上演しました。

豊岡市の様々なエリアで演劇を上演するフェスティバルなので、私たちとしてはできれば地域の特色を生かした作品に仕上げたいと想って、滞在制作しました。通算三回だったかな。

五島:『today』はもともと福岡で一度、春吉というエリアでやったことがある作品でした。

自分たちが住んでいる場所ではあるので、視点を変えて普段見慣れている街をみてみるというコンセプトだったので、土地ありき、街ありきの作品です。

福岡なら自分たちがある程度知っているから何とかなるんですけど、全く馴染みのない豊岡となると一から色々と調べないと作れないので、何度も行ってフィールドワークしました。

高野:それと地域の人との信頼関係も構築しておかないと「何やってんだ?!」みたいな感じになってしまいます。地域の人との関わりで発見することが作品に還元できることもあるので、かなり多くの人たちと話したりもしました。あったかいんだよね、本当に。応援してくれるし。

五島:「いずし」って「出」る「石」と書いて「出石」という街で、そこの人たちはみんなウェルカムで、助けられてできた作品ですね。

三好:地元の人たちご本人のエピソードも織り込みながら作ったんですか。

高野:はい、ありますね。地域おこし協力隊っていう制度で県外から豊岡市にいらっしゃっている方が結構多くて。地域おこし協力隊というのは全国に制度があると思うんですけど。

五島:他の地域のことはわからないけど、豊岡はあちこちから来ている感じでした。豊岡がカバンの産地だったり、自然も豊かなので、そういったことに関連する仕事に協力隊の人たちが携わってました。

高野:マッスィーが地域おこし協力隊で来たという設定にしたり、地元で活動するアーティストの役だったりと行ってみて知ったエッセンスを入れてみました。あとはお店を立ち寄りポイントにして、ガチでお客さんと街の人に出会ってもらう仕掛けを作ったりもしました。

佐藤:お客さん自身が登場人物となる内容ですよね。

高野:そうです。旅人として出石に街に来たという設定です。演劇の脚本の中に「ト書き(とがき)」という指示する文章に従って、お客さんは旅人として街を歩くという仕組みになっています。ト書きに沿って街を歩くとストーリーになっていて、お客さん自身が見つけた景色とか出来事を最後のゴール地点に持ち寄って、皆でそれを分かち合う時間を作る構成になっていましたね。

佐藤:すごい作品ですよね。

高野:伝わっているかなぁ。

五島:なかなか口頭だけだと難しいね。

三好:「ト書きで指示する」手法はちょっとした発明だと思って、(記録映像を)拝見していました。

高野:あ!嬉しい!私もそう思っているんですよ笑。

三好:ロールプレイングゲームだと「右に行け」「左に行け」というようなコマンドに演劇という構造を被せて、自然に発動させるという意味で面白い仕掛けだと思いました。

高野:最初、春吉でやった時は本当にただの指示だったんですよ。指示のことを考えると、ずっと指示されるのは嫌ですよね。そういう作品だと思っていても、ちょっと窮屈に感じちゃうよね、という話になって、それで「ト書きだあー!」ってなりました笑。

三好:「突破できる!」ってなったんですね笑

五島:そこに行き着くまでに紆余曲折あって、試行錯誤してました。

高野:指示する口調にしたくないから、「なんとなく、そうしてみる」という柔らかい言い方にしてみようかというアイデアもありました。

五島:最初はLINEを使って、指示を送っていたんですけど。

菅原:度重なる通信トラブルね。

五島:そうそう、「あの人に送れてない!」みたいなこともありました。

高野:で、結局アナログにしたんよね。

三好:演劇の中に入ったということを、本当に文字通り体験することになるので、すごいアイデアだと感動しました。

高野:嬉しい。

五島:よかったねえ。

佐藤:当事者になって、相互のやりとりも生まれますものね。

高野:人それぞれの物語が面白かったんです。私たちが知らない間に、出石のお店に入って交流があったんだ、ということを知るとか、旅人としてその時間を過ごしてくれたんだなと思って。

五島:僕らのコントロールの及ばないところで旅人に楽しんでもらっているのも面白かったね。

PUYEY1
PUYEY2

PUYEY の作品:その 3

三好:いかにそういう状況を作るかというのは面白いところですよね。今、菅原さんの声が一瞬聞こえましたが、PUYEYとはどういうご縁で繋がっていったんですか。

菅原:今のSRギャラリーで、PUYEYが北海道のツアー報告会をするというのがあって、

高野:いやいや、公演をしたんですよ。その次の日がツアーの最終日だったので、「おみやげ話」というアフターイベントを予定していたんです。

菅原:あ、そうか。

五島:ツアーで色々あったことを皆に報告する。

高野:そう、写真を交えて「ここではこういうことがありました」みたいなイベントをやる前日です。そのリハをしていました。

菅原:そこになぜかずっといたんだった。

五島:ずっと残ってたんですよ。

高野:なかなか帰らないお客さんがいて。

三好:ああ、それ面倒だなぁ、いますよねそういう人笑

高野:「次の日のリハしたいけど、お客さんいるけど…やっちゃおうか」みたいな笑。

菅原:で、出た写真、出た写真にコメントもいちいち付けてたからね。

高野:「なんだこれ〜」とか言って。

三好:悪絡みじゃないですか笑それはPUYEYが立ち上がって、わりとすぐの時ですか?

五島:2018年ですね。

菅原:当時は、前職の福岡市文化芸術振興財団にいました。2021年に任期満了で財団を卒業した時にすぐに声かけてくれたのが、PUYEYで、『today』という作品を豊岡演劇祭に出したい、助成金も取りたいので制作をしてくれないかというお話でした。

すぐ声をかけてくれたご縁と、PUYEYの作品を見たこともあって、「いいよ」と。でもね、『today in 出石』ではコロナもあって、補助金でも相当苦労したんですよね。

2021年は緊急事態宣言などで中止になって、このままじゃ引き下がれなくて、去年の9月にようやく公演に漕ぎ着くことができました。今回の北九州公演の話はその後にしてもらったんだっけ。

高野:いや、劇トツで優勝をしたのが去年の7月だから、してましたね。

菅原:あ、そうか。ここまで来たら満席にしたいね、という感じで制作のお話を受けました。

三好:頼りになるおじさんと…

高野:今のやりとりは頼りになってないですけどね。

佐藤:あ、うなだれてる笑

三好:そういうご縁の中で、PUYEYのどこに惹かれたんですか。

菅原:例えば『ハッピーロスタイム』という一人芝居で、女性が子育てに苦労している話を観ていると、やるせなさや辛さを感じつつ、自分に入ってきたセリフで自分の子育てしていた時のことを思い出しちゃうとか、同時に演劇の作品とは別なものが脳内に出てくる感じがするんです。

去年、劇トツで優勝した『おんたろう』もそういう感じだったんですよね。だから周囲のお客さんの反応がものすごく良くて。それは多分、目の前の演劇作品に限定されずに色々なものを思い出して見てたんじゃないのかなって。そういったことが不思議とPUYEYの作品にはあります。あとはこの二人が単純に面白いというのがありますね。

けちゃさんは特に顔芸が最高。

高野:それ、ラジオで言う?笑

菅原:でもね、先ほどのト書きみたいに、けちゃさんが思いつく瞬発力がものすごくて、それを待つ価値があります。

 

三好:僕もPUYEYの作品を事前に映像で拝見しまして、その中に『フェアロビクス』という作品があるんですけど、それを見ていると菅原さんの言う通り、不思議な現実への浸透力というか喚起力があって、見終わった後でもふとした瞬間に『フェアロビクス』が出てくるんですよね。自分の現実や日常に忍び込んで、ずっとそこにいる感じがあって、脚本の中に織り込むエピソードの按配が上手なんだろうな、と思っています。

というわけで『フェアロビクス』という作品をあらためてご説明頂いてよろしいでしょうか。

高野:フェアに生きるためのエクササイズ、フェアロビクスですね。

三好:笑

高野:フェアとエアロビクスを合体したもので、エクササイズを教える男女のインストラクターが「じゃあ、みんなも一緒にレッツ フェアロビクス!」と始めます。同じことを三回繰り返します。

一周目は男女で同じことをしても、どうしても差異が出てきてしまうよね、というのを見せます。男女が全く同じことをすることは「フェア!」と言って押し切る二人なんですけど、見ている人に「本当にフェアなのかな」と問いかける感じです。

二周目は男性が事故で脚を怪我して失って、片足だけで二人が全く同じことをして、「フェア!」と言い切るんですけど、果たしてそれが本当にフェアなのかと見ている人はかなり疑問に思う。

三周目は男性の脚が復活して、昇進するんだよね。

五島:そうそう権力を持つ。

高野:急にジャケットなんか着て、偉そうにして、同じことするフリをして、サボってるけど、圧力をかけてフェアだと言い切る。フェアじゃないことをして、お客さんにフェアだと言い切ることで、フェアとは何かを問う作品かと思います。最終的には相撲を取りました。

五島:そうだね、取っ組み合いになるね。

高野:そして「女性の方は土俵から降りてください」というアナウンスが流れるよね。何年か前に実際に事件になって、それがすごい印象的だったのと、今はだいぶ理解が進んでいるかもしれませんが、色んな土俵から女性が降ろされることはあるかと思っています。

構造的にで誰かに引きずり降ろされるというよりは、土俵にいたいんだけど、降りざるを得なくなるみたいな状況ってあるよな、と思って、そういうアナウンスを入れて最後にフェアを叫びます。

三好:ここだけ聞くと、けっこう社会派の作品じゃないですかって思うんだけど、基本のアウトプットはエアロビクスのインストラクターが「フェア!」と朗らかで良い調子なんですよ。冷たいけどあったかい、あったかいけどヤバいというある種の温度差が本当に面白いし、提起の仕方が本当に上手くて。

佐藤:マッスィーさんが「説教臭くならないように」と言っていた通りで、いつの間にかすっと考えている自分がいるんです。

三好:フェアは「平等」と訳すものもあるけど、「公正」「均等」とか色々な訳語をあてながら、「これフェアか?」「俺のあの日常に見ていた風景はフェアか?」「じゃあ全部一緒にすればいいってわけじゃなくないか」と問いが立っていく感じがあって。でもシリアス過ぎなくやってくるので、あれはめちゃくちゃ良い作品。

高野:ああ、嬉しい。

五島:子どもと大人が一緒に見ていると面白いことがあって。子どもが反応するところと大人が反応するところが全然違ったりするんですよね。僕が二周目で片足を失って、ケンケンの状態で色々とエクササイズするんですけど、子どもは面白がって、

高野:「あはは」と笑っていたよね。

五島:でも大人は「ちょっとこれは不謹慎じゃない!?」と笑えない状況で、それが客席で同時に取られていることが面白いというか。

三好:これはもっとたくさん見られて欲しい、純粋に良い作品だと思います。

高野:大変だけど、またやろっか。

三好:大変なんですね笑。

高野:大変なんですよ〜、バキバキになるんですよ、身体が。

三好:ずっと身体を動かしますもんね。

高野:床が硬かったりすると怪我しますね。

五島:柔らかい床がある屋内がいい笑

高野:でも、静岡市役所の前のコンクリートの上でやったことあるね笑。

三好:静岡市役所の前で「フェア」を叫ぶ笑。舞台を選ばないなぁ。

五島:隣に警察が歩いていたりしました。

佐藤:いいですねぇ。

三好:これを聴いているイベンターの皆様は柔らかい床を用意して、招聘しないとですね。

PUYEY3

『おんたろうズ』について:その1

三好:そして今日はそんなPUYEYが新作『おんたろうズ』を北九州芸術劇場で上演するということで、こちらのお話を伺いたいと思います。

まず、『おんたろうズ』はどういった作品なのですか?

高野:最初に『おんたろう』という作品を短編として作ったんですけど、その続編になります。

設定として感情の神様・エモ神様がいて、人間たちの感情エネルギーのバランスを取る役割をしているんですね。人間がポジティブなエネルギーを出したり、ネガティブなエネルギーを出したりするバランスを取っています。人間がネガティブエネルギーを出し過ぎると「怨念」というのが発生するんですね。怨念はとても厄介で、誰かを傷つけたり、自身を蝕むとても危険なもので、増幅すると戦争が起こったりと大変なことになります。なのでそういう危険な怨念が発生しないように、エモ神様はおんたろうという使者を派遣して、ネガティブエネルギーが高まり過ぎないようにあの手この手を使って下げるようにしています。

佐藤:使者がいるんですね。

高野:はい、なかなか目には見えませんが、派遣された本人だけが見えるんです。デスノートベースのシステムになっております笑。

三好:なるほどね笑。

高野:短編では、歯医者さんに勤める女性のところに派遣されたんですけど、続編の今回は小学校の先生のところにおんたろうが派遣されるお話になっています。

舞台は小学校で、この春から新任となった先生のところにおんたろうがやってきて、あなたはネガティブエネルギーが高いですから下げましょうと伝えにくるお話から始まります。

佐藤:『おんたろう』の映像を見せてもらったんですけど、あれは20分の作品でした。だけどもたった20分の間にいろんな場面があって、こちらも様々な感情を抱きました。それぐらいのすごく濃い作品だと思いました。

三好:やっぱり台本がお上手なんですよね。

高野:いやー、本当に台本が一番苦手です、はい。

三好:この作品も現実へのリフレクトが大きいんですよね。おんたろうが、この世ならざる者の姿をして現れて、その人だけが見えている状態で対話しながら、本人の中で高まっている怨念のエネルギーのガス抜きする方法をレクチャーしていくわけです。そして段々、見えている人の現実の方に侵食していって、という構成が本当に面白いなぁ、と。おんたろうがいたらいいのになって思いましたよ。

高野:自分自身もそう思っていて。自分が言いたいことを言えないことが結構多くて、嫌なことがあってもその瞬間に言い返さないから、後になってモヤモヤしたり、「あの時こう言えば良かった」とか「自分はなんて弱いやつなんだ」とか、ずっとウジウジしちゃう。

五島:作品の起点がけちゃが人に怒れないところからなんです。

三好:怒りが遅れてくるタイプの人ですね。

高野:そうなんです。ぱっと怒れる人って本当にかっこいいと思うんです。

三好:才能ですよね。

高野:アカデミー賞の時のウィル・スミス。あれが良い悪いは別として、あの瞬間にあの大舞台で怒りを表明できることが私にとっては「ウィル・スミスすげー!」でした。私だったら絶対に空気を読んでヘラヘラ笑って逃しちゃうよな、って。で、後でちゃんと言うべきだったな、となる。次はこう言われたら、こう言おうと自分の中で練習したりするようになったんです。それがおんたろうとのシーンに活かされていて、例えば「それってどういう意味なんですか!?」と言う練習の場面に反映されていたりします。

三好:今のお話を聞いていると、これは第一作目のイマジナリーフレンド的な構成がここにきて召喚されている感じがしました。

高野:そうですね、毎回変なキャラが出ますね。

三好:変なキャラは大体マッスィーですよね。

高野:笑。二人組だからね、どちらかになっちゃうんだよね。

三好:そしてマッスィーが器用なんだ。

佐藤:そうですよね。「あ、これはマッスィーさんなんだ」というのはありますよね。

三好:だって曲も作るでしょ。なんでそんなに器用なんだろう。

五島:あまり自覚はなくて、好きで色々とやっているだけなんです。

菅原:『おんたろうズ』のチラシの裏面のイラストもマッスィーだね。

佐藤:本当になんでもやるじゃないですか!

三好:勘がいいんだろうな。

高野:チラシのおもて面にあるおんたろうのデザインは私と役者(手嶋萌)でやりました。

三好:絶妙な緩みがいいですね。

高野:天使だから、レースの生地にしようとか、怨念は危険物だからこれは防護服になるね、とか。

三好:なるほど!

高野:だからゴーグルみたいなものをつけて、でも天使感なくなるから髪の毛はつけようとか、そういうキャラデザインをしています。

佐藤:今のお話、すごい面白いですね。

三好:日常のちょっと先にある少し不思議な様子を描くことで言えば、やっぱり藤子不二雄先生のSFシリーズを連想します。手触りとか、シリアスになり過ぎないんだけど、実は芯食ったこと言っていて、でも重たくない。その感じが藤子っぽい!と思っていました。

五島:僕も「異色短編集」とかすごい好きですね。飲みやすさはあるのに、実は結構えげつないことを描いているところが良いし、PUYEYの作品と通じるところはあるかもしれませんね。

佐藤:僕はおんたろうのアドバイスがすごい響いて。その言い方だと相手を傷つけることになるから、というところなんて「確かに!」となりました。

怒りに任せて、結局どちらもささくれだってしまうことってあるじゃないですか。やっぱりおんたろうは天使だな、って思いますね。

三好:考えたら佐藤さんもリアルタイムで怒らないですよね。

佐藤:僕も溜め込むんですよね。

五島:ネガティブエネルギー溜め込んでしまっていますね。

佐藤:怨念になっちゃいますよね。

三好:すぐおんたろうが来てくれますよ笑

高野:気をつけないと。

 

『おんたろうズ』について:その2

佐藤:今回は長編になっているということですね。

高野:そうです、複数形になっておりますので…

佐藤:「ズ」ですもんね。

三好:えっ!?どうするの!?

佐藤:マッスィーがなんでもできるといっても分裂はさすがに笑。

高野:今回はキャストがなんと六人になります。

三好:おお、劇団だ。

高野:そうなんです、いい俳優さんい集まっていただいております。

今、小学校とか教育現場には色々な社会問題がギュッと詰まっているというか。教員不足だったり、教員の精神的な病気だったり、子どもたちの一番の死因は自殺だという悲しいニュースも最近見ました。

子ども時代に一番長く過ごすから、小学校って人生や人格形成にすごく影響する大切な場所なんだけど、社会の様々な歪みが押し寄せているよなと思ったので、おんたろうが何人かいることで、この立場の人はここで苦しいし、この立場の人はこれで苦しい、といろんな視点からお客さんが俯瞰して見てもらえたらいいなと思っています。

三好:『おんたろうズ』はシリーズ化できますよね。

高野:できちゃうんですよー笑。

三好:今の現実社会は、色んなシチュエーションで怨念たまるばっかりですから。

高野:こっちに来てくれ、あっちに来てくれってなりますね。

五島:派遣しまくられるな。

三好:そのうち本当にリアルに「おんたろうとしてちょっと来てくれないか」ってなるんじゃないですか。PUYEYがいつのまにか「おんたろうズ株式会社」になったりして。

一同:笑

佐藤:助かりますよね。

高野:優しいおんたろう事務所笑。

そうそう、複数形になったからおんたろうに人格が必要だなと思っていて、色んな種類や性格のおんたろうを考えています。

佐藤:おんたろう同士で何かあったり!?

高野:そうなんです!おんたろう同士の会話もあるよなぁと考えています。

佐藤:広がるなぁ。

三好:公演は4月22日と23日にあって、今は3月の中旬くらいで、目下製作中であるということで後々明らかになってくるわけですね。台本は今はもう絶賛…

高野:執筆中ですね、明後日の方見ながら笑。

三好:あと1ヶ月ぐらいですけど、そういうものなのですか。

高野:そういうもんですね。

五島:PUYEYは稽古しながら、あれこれ試しながら創り上げていくスタイルなんで、これからガッと。

菅原:外から見てると本当にそういう感じなんですよ。

例えばけちゃさんが切れ切れのシーンを作ってきて、みんなで読んで、これどうかな、ここはこうじゃないのかなというのを取り入れて、不思議と次の日にはまた新しい台本が出来上がっている。それがけちゃさんの創作スタイルですね。

そして脚本だけではなくて、演出もするので俳優がどう思っているのかというのを聞き出して、それをちゃんと作品に落とし込むようなところはPUYEYの最も特徴的なところかもしれないですね。だから俳優さんの良さがすごく出てくるんですよ。素ではないんですけど、その人の良いところが引き出されているというのも一つの見どころかなって思います。

馴れ合いではなくて、すごく仲が良くなる現場ですね。自分たちの表現ができる場所もPUYEYの創作現場の大きな特徴かもしれないですね。だから僕も好き勝手にやらせていただいて、たまに怒られる笑。

三好:いいですね。俳優さんの特性みたいなものをちゃんと引き受けて、オーダーメイドでチューニングを合わせにいくというのは双方にとって絶対良いことですもんね。

高野:そうですね私たちがお声がけする俳優さんは、イエスマンで演出の言うことを聞く人よりも自分で考えて、一緒に創り上げていけるような人です。俳優もクリエイターだと思っているので、一緒にクリエーションできる仲間として、信頼できる人にお声がけしています。

五島:今回は僕ら二人以外に四人の出演者がいるんですけど、ただ出るというよりもフィーチャリングしている感じです。コミュニケーション取って、一緒に創り上げていく作品に今回もなるだろうなと思っています。

佐藤:そういうやり方って、それぞれの役者さんを通してお客さんにより伝わると思います。現場は大変だとは思うんですけどね。

三好:確かに俳優さんというそれぞれ違う人たちの目線がどんどん入ってくる訳だから、より接地面が増えてくるというわけですよね。これは楽しみではないですか。

佐藤:これから『おんたろうズ』は一大組織となってくるわけですからね。

三好:ミニオンが最初出てきた時は、まさかこんなにシリーズ化するなんて思ってなかったでしょ。

五島:気づいたらあちこちにミニオンがいてね。

三好:マクドナルドとおんたろうズがいつかコラボする時があるんじゃないですか。

高野:夢が広がります笑。

高野:でも本当にミニオン的な個性の出し方はしているよね。髪の毛とか。

五島:うん、確かに。

三好:これは本当に僕も現場で見たいと思っています。是非チェックしたいですね。

高野・五島:ありがとうございます。

 

佐藤:公演は4月22日土曜日、23日日曜日の二日間で、三ステージですね。22日が午後七時から、23日が午前11時からと午後3時からの回があります。

そして、22日7時と23日3時の回にはアフタートークもあるということですね。

三好:23日のアフタートークにはこの番組でもお世話になった北九州市漫画ミュージアムの表さんがゲストとして出演されると。どういうつながりなんでしょうか。

五島:今回の『おんたろうズ』は「劇トツ」という短編演劇バトルの優勝公演になるわけですけど、「劇トツ」の時の審査員に表さんだったんです。

三好:表さん、いろいろとやっているんだなぁ。

佐藤:含蓄が深い方ですもんね。

五島:演劇畑の方ではないとは思うんですけど、審査講評の時もすごく素敵なコメントをしていただきました。演劇とはちがう視点からのお話は面白いし、新しい発見にもなるので、今回のトークでもそれを期待できるんじゃないかなと思っています。

佐藤:北九州劇場全体が温かい雰囲気になりそうで楽しみですよね。

高野:今回、三歳から入場可能にしているので、できればお子さんも見に来てくだされば嬉しいなと親子チケットを設定して、11時の回というお子さんと見やすい時間帯をつくりました。

『フェアロビクス』みたいに子どもが客席にいるとちょっと雰囲気が変わったりとか、子どもが反応する場面、大人が反応する場面があって、多様な客席になったらいいな、と。本当に温かい空間になったらいいなと思います。

三好:三歳児がおんたろうとどのように出会うとか、ね。

高野:泣いてもいいんです。

五島:声出してもね。

佐藤:「おんたろう〜」とか言っちゃうかもしれない笑。

高野:いいんです、いいんです。

五島:客席も和みますしね。

高野:いいな、想像したら面白いな。

三好:楽しみだ。この番組も含めて引き続き応援しておりますので、どうぞ頑張ってください。

高野・五島:ありがとうございます!

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